旅の記録30 熊野灘ツーリング

■日程■
2005/11/26-28
■距離■
@31.0km A24.1km
B14.0km
■同行者■
2日目午前中のみ知人と。他はソロ。
■交通■
[行き]

[帰り]
紀伊長島から賀田までJR。その後は車。


 本格的な冬を前に、熊野灘を漕ぎに出かけました。今回の往復は、車を利用しました。本来は、公共の乗り物を使った片道の旅が好きなのですが、大阪から尾鷲まで電車で行くのは、かなり不便なので、やむを得ません。

 もう日が短い季節となったので、なるべく時間を有効に使うことにします。金曜の夜に移動し、賀田の駅の近くで車中泊。翌日の早朝からカヤックを組み立てて漕ぎ出しました。
 今回のツーリングは、天気に恵まれ、太平洋とは思えない程の穏やかなコンディションでした。日中は、シャツ1枚でいられるほど暖かく、水温もまだ比較的高いので、安心して漕ぐことができます。ただし、夜は急速に寒くなるので、焚き火と暖かい寝袋は必須です。
 賀田から尾鷲までの海岸は岩壁が続き、港以外には上陸できる場所はありません。10km以上は連続して漕ぎ続けなければならないので、要注意です。一方、尾鷲から北は、遠浅の地形で、至る所にキャンプに最適なビーチを見つけることができます。
 途中、少し遠回りでしたが、九鬼という漁港に寄ってみました。深い湾の中は穏やかで、港には防波堤もありません。のどかで開放的な漁村です。散策していると、店先に大量のサンマがぶら下げてある干物屋(浜千)を発見。乗りのいい店員さんがいて、しばらくおしゃべりしたり、写真を撮らせてもらったりしました。こちらで、夕食用に、フグ、サンマ、アジの干物を購入。

 尾鷲湾を横切り、銚子川を少しさかのぼって、河口付近の川原でキャンプしました。このあたりの川は、標高1600mの大台ケ原から一気に下ってくるので、感動的なほど水が綺麗です。河口の辺りは汽水域になっていて、魚が泳ぐと、海水と真水が混じりあい、陽炎のようにゆらゆらと揺れるのが見られます。

 今回の旅では、事前に連絡を取り、石部さんという方に会うことにしていました。彼は、5ヵ月かけてアメリカ西部を徒歩で縦走するチャレンジを成功させた人です(→PCTサイトへ)。石部さんとは、2年前に環境教育の集まりで知り合ったのですが、その後海山に移り住んだと聞き、是非一度お会いしたいと願っていました。お忙しかったようですが、半日間ツーリングに付き合って頂き、海山での生活や、地元の産業のことなど、いろいろ聞かせてもらうことができました。
 石部さんとは湾を出たところで別れ、後は単独で北へ向かいます。地図には、海岸近くに大池という湖があります。面白そうな地形なので、見に行くことにしましたが、距離的に近い南側は、岩壁の海岸で近づくのが困難でした。実は西側の湾から歩くのが正しかったようです。戻るのも無駄なので、東側の海岸から何とか上陸し、藪こぎしながら大池を目指しました。そこは鳥の楽園でした。人間が近づくべき場所ではなかったようです。

 半島を回って、白浦の漁村で上陸し、食料の買出し。商店で、豆腐、柿、酒などを買うと、おまけでサンマとイワシの干物を頂きました。これで、今夜のおかずは十分です。
 もう少し漕ぎ進み、広い玉砂利の浜に、無数の流木が散らばる理想的な場所でキャンプ。

 翌朝は、のんびり10時頃出艇。海岸の防波堤の中は、大きな公園になっていました。おそらく、かつては、多くの鳥たちが集まる豊かな湿地だったのでしょう。こんな施設を作ったら、警戒心の強い鳥は近寄るはずがありません。人も来なければ、鳥も来ない。吐き気がするほどの愚かな公共事業がここにもあります。

 鈴島を前に、昨日買った柿を、ダイビングナイフでむいて食べました。今では、自分の中ではごく当たり前となった行為ですが、大海原の真ん中で柿の皮をむくというのは、極めて非日常的な行為だったのではないかと思うのですがどうでしょうか?

 紀伊長島の島は、天然記念物のカンムリウミスズメを始めとする鳥の保護区で、上陸禁止になっているそうです。しかし、ちょっとぐらい許して下さいよ!と言いたくなる程、素晴らしい景観の島が続きました。この辺りを漕ぐだけでも、わざわざ来た甲斐があったというものです。
 紀伊長島では河口付近で上陸して、パッキングしたカヤックは川原に置き、電車で9駅戻って車を回収。再び紀伊長島まで走って、カヤックを積み込み、帰途に就きました。車を使うのも、なかなか大変です。