「マイ箸から世の中を変える」

 マイ箸を使い始めてから、1年以上が経ちました。きっかけは、ある環境系のドキュメンタリー上映と講演会での出来事。上映後の懇親会が始まった時に、ゲストの方は当然のようにマイ箸をさっと取り出しておられましたが、主催者側は誰も用意していなかったのでした。これは恥ずかしい。
 それ以来、ほぼ毎日マイ箸を携帯しています。よく指摘されるように、箸を洗うための洗剤や水を考えると、必ずしも環境負荷を下げているかどうかは分かりません。非常にささやかな運動ですし、自分だけ良いことをした気分になっているに過ぎないという批判はあるかと思います。
 しかし、トータルの環境負荷がとんとんだとしても、中国の砂漠化の要因とされる輸入木材の削減には役立ちますし(国産の間伐材や端材を利用した割り箸はごくわずかです)、他国に環境コストを転嫁することがなく、割り箸に含まれる漂白剤などの薬物の摂取も避けることができますから、マイ箸を使う意味はあると考えています。でも、マイ箸には、自分の使う割り箸を減らすことに留まらない、大きな影響力を持っているのです。
 友人と食事に行って自分だけマイ箸を使ったとき、「罪悪感を感じちゃった」と言われたことがあります。何気ない自分の行動が、相手の感情にまで影響を与えていたのには驚きました。この友人は、それをきっかけに、マイ箸を使うようになるかもしれないし、エコロジーへの関心が高まるかもしれない。自分のちょっとした行動で、相手に影響を与えられるというのは、言葉よりも遥かに大きな力になります。
 私の行きつけのお店では、マイ箸がほぼ定着。ちゃんと顔を覚えてくれて、最初から割り箸は出さずに、「いつもお箸をありがとうございます」と一声かけて頂ける場合もあります。ちょっとしたコミュニケーションですが、気持のいいものです。おそらく、店員さんも、店で割り箸を使っていることに、少しの罪悪感を感じてくれているかもしれません。そして、お店で、箸を再利用しましょうという提案に繋がるかもしれません。
 小さな習慣から、大きなうねりへ。マイ箸でも、確実に社会を変えることは可能です。