旅の記録37 大和川から大阪湾へ

■日程■
2006/05/21
■距離■
30.4km
■同行者■
なし
■交通■
[行き]
JR浅香駅下車
[帰り]
阪急今津駅乗車


 日本を代表するカヌーイスト、野田知佑氏の著作に、「日本の川を旅する」という本があります。その中で、際立って異色なのが、「多摩川」の章。今でこそ、水質が改善され、多くの鮎が遡上するほどに蘇っていますが、出版当時の1982年は、最も汚染が進んだ川のひとつでした。
 さて、今、西日本で最も汚れた川と言えば大和川。野田氏に倣い、今回は趣向を変えた旅をしてみることにしました。
 漕ぎ出しは、大阪市と堺市の境界にある浅香駅。覚悟を決めて出艇しましたが、思ったほどひどくはないようです。透明度は30cmぐらいしかありませんが、魚はたくさん泳ぎ、川岸には鳥や亀が数多く見られます。海が近づくにつれて、ますます魚の密度は高くなり、一漕ぎ毎に、魚が逃げる波紋ができていました。どんな川でも、河口域には豊かな生命が息づいているのには、驚かされます。

 大阪湾に出ると、西日本一の高さというワールドトレードセンターのコスモタワー(256m)が現れます。大阪の市街地では、他のビルにさえぎられることが多いですが、海の上では常に視野に入る存在でした。
 現地に来る前は、大型船の往来を心配していましたが、それは全くの杞憂でした。そもそも、航行している船がほとんどありません。日曜だったからなのか、貿易港としては寂れてしまったからなのか? がらがらに空いた国道を、歩いて渡っている気分でした。
 左下は、大阪ではお馴染みの海遊館と天保山の大観覧車。こんなに遠景で見るのは初めてですが、何だかとても小さな存在に感じられます。右下は、フンデルトワッサーがデザインした舞州ごみ焼却所。殺風景な倉庫やコンテナが並ぶ大阪港で、ひときわ目立つ存在です。離れ小島の埋立地で、これだけ自己主張し続けるのは是か非か?

 舞州の北にはヨットハーバーがあり、10艇ぐらいのヨットやディンギーが練習やクルージングを楽しんでいました。その先、単調な尼崎沖をしばらく漕いで行くと、ウィンドサーフィンのメッカである甲子園浜に到着します。実は5年ぐらい前に、数回レッスンに通ったことがあるので、ちょっと懐かしい場所です。この日はほとんど風がなく、ウィンドサーフィンよりも、私のカヤックの方がずっと速く進めました。この辺りで日が傾いてきたので、小さな川を遡り、今津駅のすぐ近くまで漕ぎ上がって終わりにしました。

 大阪湾というのは、海の汚ささえ目をつぶれば、手軽に漕げて、しかも意外に面白いところなのではないかという気がしています。海岸は垂直の岸壁ばかりですが、所々に階段やはしごがあるので上陸は可能ですし、きれいな公園で休憩できる場所もあります。ただし、途中に数箇所、立ち入り禁止の場所があるので、気を付けましょう。私は、つい釣り場の中に侵入してしまい、大音響のスピーカで注意されてしまいました……、ごめんなさい。黄色いブイのある範囲は、立ち入り禁止です。