旅の記録64 霧と風の三陸

■日程■
2008/5/3-6
■距離■
@6.8km A22.5km
B21.4km C25.9km
■同行者■
なし
■交通■
[行き]
岩手船越駅下車
[帰り]
吉浜駅乗車


 去年は田老から船越まで漕いだ三陸。今回は、船越から南へ繋いでいくことにしました。夜行バスを降りた後、釜石でゆっくり朝食を食べていたら、電車待ち2時間のタイミングになってしまい、漕ぎ出しは午後1時半過ぎ。
 漕ぎ始めると、すぐに霧が出始め、視界は100メートルぐらいしかなくなりました。しばらくは、単調な湾内なので岸沿いを進みますが、ややうねりも入ってきているので、岸に近付き過ぎるのも危険。適度な距離を保ちつつ、慎重に漕ぎ進めます。

 浪板海岸あたりまで漕いだとき、ふと沖を見ると、突然大きな波がせまってくるではありませんか! カヤックの向きを変える余裕もなく、真横からブレークしつつある大波を食らいました。連続して3波。おそらく、大型船の引き波でしょう。霧が濃いために、船が通ったのが全然分かりませんでした。幸いどうにか沈せずに持ちこたえましたが、ラダーが動かない。後ろを見ると、またこれです(右写真)。この頃、ラダートラブルが多い…… 今回は、少し漕いでいたら自然に直ってくれました。この霧では、これ以上漕ぐ気にはなれなかったので、吉里吉里の海岸で3時ぐらいに上がってキャンプ。
 翌日は、初日ほどではないものの、やはり霧。風はほぼゼロですが、大きなうねりが常に打ち寄せてきています。停滞するほどのコンディションでもなかったので出艇し、大槌湾を渡って御箱崎へと目指しました。

 無風といえども、うねりのある中での岬回りは厳しい。大きな三角波に囲まれ、カヤックはあらゆる方向に揺さぶられます。常にバランスを取ることに集中。左下写真は、わずかに波が治まったタイミングで撮った千畳敷。陸から見れば景勝地のようですが、海からでは単なる岩の海岸でした。
 御箱崎を過ぎると、遠くに三貫島が見えます(右下写真)。断崖に囲まれたこの海岸。ぜひ近くで見たいものですが、この時化と霧の中で渡るのは無理です。残念。

 うねりがぶつかる断崖を漕ぎ続け、最初に現れる集落が仮宿です。先日お会いしたカヤッカー某Mさんのサイトで紹介されていた集落だったので、上陸してみることにしました。
 漁師さんらしき人が数人作業していたので、挨拶をして少し話をしますが、訛りが強くて全く聞き取れません。良く聞いていると、どうやら「寒いから風呂に入って行け」と言ってくれているようです。ありがたい! さっそく着替えを取ってきて、3日ぶりの湯に浸かり、冷えた体を温めることができました。風呂から上がると居間に呼ばれ、なみなみと注がれたコップ酒を差し出されました。今月は、禁酒月間でしたが、出された酒は飲まないわけにはいきません。
 話を聞くと、まさに、以前Mさんが訪れたお宅だったそうです。起こるべくして起こる偶然なんでしょうね。その晩は、漁港近くの作業小屋で泊まらせてもらうことになりました。

 翌朝目覚めると、またもや濃霧。少し漁港で時間つぶししていると、漁師さんから、獲れたばかりの貝(イガイ)をもらいました。晩御飯のおかずゲットです。話に聞いた通りの、親切な漁村でした。
 やや霧が薄くなったところで出艇。両石で少し買出ししてから、また激しく三角波の立つ馬田崎を回り、釜石湾に入りました。

 釜石湾には、大きな防波堤があるので、湾内は非常に静かです。久しぶりにゆったりと漕ぎ、リラックスできました。景観も美しいので、荒れたときは釜石湾内だけでも楽しめそうです。

 釜石湾の南側を散策し、ベストなキャンプ地を見つけて焚き火キャンプ。今朝もらった貝は、焼いてしょうゆを垂らして食べました。
 ここから尾崎までは、「新奥の細道」というハイキング道になっています。ここ中間地点では、トイレもあって快適に過ごせます。夜は釜石の夜景も見えて綺麗。

 翌朝は、初めて朝から晴れ。ようやくです! やや風が強いという予報に、少し不安を感じつつ漕ぎ出し。やはり西風が強いですが、風裏なので波もなく、途中までは快調に進みました。岬の岩場でも、すぐ近くまで寄って、洞門めぐりなど楽しめます。

 しかし、その後が大変。大根崎を過ぎてからは、強風との真っ向勝負。8割程度の力では、時に押し戻されるほどの突風が吹くので、ほとんど全力で漕ぎ続ける必要がありました。少しでも距離をかせごうと思い、唐丹ではなく、吉浜を目指してしまったのが間違いでしたね。最初は、最短の直線コースで立ち向かっていましたが、岸ベタ5mぐらいの方が風が弱く、少し楽に進めることが判明。またひとつ賢くなりました。それでも結局、約10kmの距離を漕ぐのに、4時間ぐらいかかってしまいました。修行のような最終ラウンドを乗り切って、吉浜にゴールイン。これほどの達成感を味わうのは、久しぶりでした。