旅の記録69 出会いと喪失の山口旅

■日程■
2008/10/11-13
■距離■
@5.2km A26.5km
B18.5km
■同行者■
なし
■交通■
[行き]
友人の車
[帰り]
海上保安庁の車


 このところ、何かと忙しくて、なかなか海に出られなかったのですが、思い切って3連休プラス休暇1日を取り、山口まで行ってきました。

 初日は、かなり強い北東の風が吹いており、モチベーションは上がらず。下関の友人に、車で案内してもらい、角島などで観光していました。
 最初、東へ進む予定でしたが、この数日間は東北風が吹く天気予報だったので、青海島スタートの西向きのコースに変更。穏やかな、青海島の湾内まで車で送ってもらって、午後4時過ぎに漕ぎ出しました。まずは、湾内をちょっとだけ漕いで、手頃な浜でキャンプ。

 翌日は、通の鯨資料館を見学。ほんの少し昔は、ここでも鯨が取れて、捕鯨が文化として根付いていたのですね。今ではもう、伝統的な古式鯨漁は不可能になってしまって、鯨の漁具は博物館入りになってしまった訳ですが、この文化はぜひ後世に伝えていって欲しいものです。

 通を出ると、すぐに荒々しい青海島の北岸が現れます。海岸には入り組んだ岩が続き、カヤックで通るのは楽しい。

 前日程ではないですが、北からやや大きいうねりが入っており、岸壁では大波がブレークしていました。しかし、せっかくの青海島なので、果敢に岸沿いのコースを挑戦します。洗濯機のように波にかき回される洞窟にも入ってみました。もみくちゃにされるのがまた楽しい。生暖かい湯気が充満した洞窟もありました。温泉が出ているのでしょうか。海が穏やかなら、もっと奥まで入ってみるのですが、さすがに怖い。

 青海島の西端は、穏やかな浜や洞窟が点在するパラダイススポット。波の穏やかな日に、ここで1日のんびりしたら、最高でしょうね。今回は、波が少々高くて、入って行けないところもあったので、またぜひ訪れたいと思います。

 青海島を出て、深川湾を約3km横断し、二位ノ浜へ。二位ノ浜は、遠浅のサーフポイントで、数十人がサーフィンを楽しんでいました。ということは、浜では大波が立っているということで、シーカヤックの上陸には、なかなか厳しい状況です。注意深く、波に垂直に進んで行きますが、最後の波に押されたときに、船首が砂地に引っかかり、あと少しで前転するところでした。危ない危ない。

 どうにか無事に上陸後、広い砂浜で焚き火を始めていると、男性の若いサーファー2人が「愛について語りませんか!」と言いながらやって来たので、一緒に夜更けまで焚き火を囲むことになりました。
 2人ともベジタリアン(私は今は気が向いたときだけベジタリアン)だったので、厚揚げを炒めて生姜醤油をかけて出してあげると、大変喜んでくれました。お返しにと、オクラや、インゲンや、里芋などいろいろ新鮮な食材を提供してくれて、なかなか豪華なベジタリアンバーベキュー大会になりました。
 話をするうち、サーファーの一人は、非常に稀な精神的体験をしたことがある人だということが分かりました。これは、言葉での説明が難しいのですが、理性に惑わされることなく、世の中をあるがままに感じることのできる精神状態とでも言えばいいでしょうか。本人曰く、「全肯定の愛」だそうです。私は、本で読んだ知識はありましたが、実際に経験した人に会うのは初めてでした。おそらく、1万人に1人もいないぐらいの、貴重な体験だと思っています。こんな所で、偶然にお会いできるというのは、本当に奇跡的。

 翌朝は、快適な二位ノ浜で、のんびりと朝の時間を過ごし、10時過ぎに出艇。二位ノ浜から小田大浜にかけての海岸は、奇岩、洞窟、細い水路が続き、とても素晴らしいシーカヤックフィールドでした。波も穏やかで、最高の一日。

 小田大浜も、サーファーが集まる遠浅の美しい砂浜です。ゆっくりとお昼休みを取って、ポカポカ陽気の中で気分良く昼寝をした後、再び出艇。川尻岬の西端まで漕いでこの日の行程は終えることにしました。

 川尻岬キャンプ場は、海岸から50mぐらい急斜面を登ったところにあります。フェザークラフトのザックに、キャンプ道具などの持ち物を全て入れて坂を上り、誰も居ないキャンプ場で一人キャンプ。

 翌朝、最終日はしっかり漕いで行こうと、意気揚々と海岸に降りたところ、カフナは跡形もなく消えていました。しばし呆然。海岸の歩いて行ける範囲を1時間ぐらい探しましたが、影も形も見当たりません。残念ながら、この状況ではどうしようもなく、流失の可能性もあるので、118に連絡。最寄の駅まで2時間ぐらいで行けそうだったので、歩き始めると、警察から携帯に連絡があり、現場に戻るように指示されました。その後も、何度も電話がかかってきて、警察から3名、海上保安庁から2名がやって来て、半日がかりの現場検証。こんな騒ぎにするつもりはなかったのですが……
 その後、近くの漁協などへ情報を流して頂いたようですが、結局カヤックは見つからず。流出か盗難かは分からないままです。満潮の水位より十分高い位置まで引き上げたつもりでしたが、大型船の引き波などで流された可能性はないとは言い切れません。やはり、長時間カヤックから離れるときは、岩や木に繋いでおくのは鉄則ですね。また、今思うと、最後の状態を写真に撮っておけば重要な証拠になりました。痛過ぎる損害でしたが、いい教訓になりました。
 海上保安庁の車で、長門駅まで送ってもらい、小倉に戻って夜の街へ。ふらりと立ち寄った居酒屋がとても面白いところで、マスター相手に、深夜まで居座ってしまいました。不運の後には、幸運な出会いがあるのが人生かな。